認知症を改善 中鎖脂肪酸
中鎖脂肪酸とは
健康のために注目を浴びているのが、中鎖脂肪酸(MCT:Medium Chain Triglyceride)です。
消化吸収に優れているため、体内に蓄積しない脂質です。
天然成分でココナッツオイルや母乳などに含まれています。
通常、 脂質の消化吸収には、リンパ管や静脈を通って脂肪細胞や筋肉、肝臓に運ばれるため、消化酵素や胆汁酸が必要ですが、中鎖脂肪酸は、これらがなくても直接肝臓に運ばれエネルギーとして分解、吸収されます。
一般的な植物油よりも素早く消化吸収されてエネルギーに変化します。
その早さは、一般的な植物油の長鎖脂肪酸と比べ、消化吸収は4倍、代謝は10倍といわれています。
体に負担がかかりにくい効率よくエネルギーになる脂肪酸といえます。
エネルギーとして分解されやすく脂肪として体内に蓄積されにくいので、栄養補給やダイエットに最適です。
栄養補給を目的に1960年代から未熟児や手術後の患者さんに使われてきました。また腎臓病患者さんは、タンパク質の摂取量を抑えるとエネルギー不足になりやすいため、少量でも高エネルギーで膵臓や胆嚢への負担が少ない中鎖脂肪酸がよく使われています。介護現場でも低栄養状態の高齢者へ使われている他、スポーツ選手の食事やダイエットのサポートにと、様々な場面で使われています。
中鎖脂肪酸とアルツハイマー
中鎖脂肪酸が、最近最も注目されているのは、アルツハイマー型認知症のリスクや症状を低減させる働きです。
通常、体は、まず糖質(ブドウ糖)から作ったエネルギーを使います。
エネルギーが足りなくなると、次は体脂肪を燃やして作ったケトン体をエネルギーに使います。
糖質をとる量を制限し、タンパク質の多い食事をとり、そして中鎖脂肪酸をとることで、効率的に脂肪からケトン体を作り脂肪燃焼を促します。
脳も同じです。
脳は、通常、エネルギー源としてブドウ糖を利用します。
しかし、ブドウ糖が足りなくなると、脂肪から作られる「ケトン体」をエネルギー源として利用するようになります。
アルツハイマー病になると、脳はブドウ糖をうまく利用できなくなります。
エネルギーが不足した脳の細胞は、機能不全となり働かなくなります。
中鎖脂肪酸をとると、肝臓でケトン体が作られ、脳でエネルギーとしてすぐに利用できます。
ケトン体を活用することで記憶力の低下が抑えられたという研究結果が報告されています。
アメリカのメアリー医師は、実際、アルツハイマー型認知症の夫の食事に中鎖脂肪酸を使って、症状に改善が見られたと、報告しています。
さらに別の研究でも、アルツハイマーの患者と軽度認知障害者に中鎖脂肪酸をとってもらったところ、ケトン体が増え、記憶力の低下が抑えられたと報告があります。
中鎖脂肪酸を含むオイル
代表的な中鎖脂肪酸はMCTオイルやココナッツオイルです。
MCTオイル
MCTオイルは、パームオイルやココナッツオイルなどから精製した、中鎖脂肪酸100%のオイルです。
効果1 ダイエット
ダイエットをサポートする補助的な役割があります。
MCTオイルは、素早くエネルギーに変換され、体脂肪に蓄積されにくく、体脂肪を燃やして作るケトン体の生成を促してくれます。
ダイエットには、糖質制限や運動と組み合わせると効果的です。
MCTオイルをとることで空腹を感じにくくなり、間食を予防する効果もあります。
効果2 持久力の向上
MCTオイルを継続してとることで、脂質をエネルギーとして利用しやすい体づくりにつながります。
エネルギー源として脂質が多く利用されるようになると、糖質由来のエネルギーは温存されて、運動時の持久力を向上させる効果が期待できます。
効果3 脳のエネルギー補給
ケトン体は、脳の血液脳関門を通ることができます。
ブドウ糖以外で脳の神経細胞のエネルギー源として使える唯一の物質です。
MCTオイルによってケトン体の生成を促すことで、脳のエネルギー不足を補えます。
脳がブドウ糖を利用しにくい状態に陥っているアルツハイマー型認知症では、脳の第2のエネルギー源であるケトン体の生成を促進すると、注目されています。
MCTオイル使用上の注意
加熱
MCTオイルは、揚げたり炒めたりすると、煙が出たり泡立ちが起こるため揚げ油や炒め油としての使用はできません。料理の仕上げや出来上がった料理に和えるなど、火が通らない方法で取り入れることがポイントです。炊飯やケーキの練りこみ用の使用は可能です。
容器
MCTオイルは、ポリスチレン製の容を破損させる性質があります。カップラーメンの容器はポリスチレン製の容器が使われることがあるため、MCTオイルを使用する場合は、中身を別の容器に移してからかけましょう。
摂取量
MCTオイルを初めて使用する場合は1日に小さじ1杯程度からはじめて、徐々に量を増やすことがすすめられています。
過剰摂取はお腹の調子が緩くなることもあるので、注意しましょう。1日あたり1〜3回を目安に少しずつとり、ドレッシングは、たくさんかけがちなので、適量を使用しましょう。
ココナッツオイル
ココヤシの実の胚乳から抽出される油です。
植物油の多くは「不飽和脂肪酸」で構成されていますが、ココナッツオイルは植物油の中でも「飽和脂肪酸」を多く含み、さらに飽和脂肪酸の中でも「中鎖脂肪酸」を多く含んでいます。
ココナッツオイルは、約20℃以下になると固まる性質を持ち、酸化しづらく熱に強いのが大きな特徴です。特有の香りもあります。
中鎖脂肪酸が多く含まれていますが、ココナッツオイルによって中鎖脂肪酸の量が異なります。
必ずパッケージに書かれている表示を必ず確認しましょう。