グルテンフリー問題

食事

グルテンフリーは体にいいのか?

グルテンフリーは、小麦に含まれる「グルテン」というタンパク質を除去した食事法のことです。グルテンは、小麦粉に水を加えて混ぜたり捏ねたりすることで、グルテニンとグリアジンというたんぱく質が、高分子化したものです。グルテンフリーの食品は、もともとセリアック病というグルテンの摂取が原因で免疫反応が正常に機能しなくなり、自分の腸の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の治療食として利用されていました。欧州や欧米では150人に1人発症しているといわれていますが、日本人に発症することはまれのようです。(日本人の有病率は0.05%程度)

では、なぜ、グルテンフリーが広く知られるようになったのかというと、きっかけは、世界No.1テニスプレーヤーのジョコビッチ選手の書籍でした。試合を棄権するほど不調だったジョコビッチ選手が、グルテンフリーを実践することにより劇的に体調が改善し、テニスの4大大会「グランドスラム」をすべて制覇したことでグルテンフリーブームが訪れました。

小麦をとると、 「血糖値が上がる」「中毒性があり小麦に依存する食生活になる」「便秘や下痢になる」「肌荒れやニキビができる」「倦怠感・疲労感を感じる」といわれていますが、本当のところはどうなのでしょうか。

世界No.1テニスプレーヤーのジョコビッチ選手の書籍

副腎とグルテンフリー

副腎は左右の腎臓の上にある小さな三角形をし、クルミくらいの大きさの臓器です。体の恒常性を保つために50種類以上のホルモンを分泌しています。中でもストレスをコントロールしているのが、腎皮質から分泌されるホルモン「コルチゾール」です。

ストレスは、炎症細胞(白血球)を作り出す骨髄を刺激し、血液中の炎症細胞を増やし、体内に炎症が起こることがわかっています。さらにこれらの一部が脳内に移行し炎症反応を誘発することも知られています。

副腎は、肉体的、精神的、環境的ストレスを受けるとコルチゾールを分泌し、血糖値や血圧、免疫機能、自律神経などが正常に働くように、その調整を迅速に行っています。コルチゾールは薬でいうと、ステロイドです。ステロイドが炎症を鎮めるようにコルチゾールも同じ役割を果たします。

ところが、現代のように日常的なストレスが多すぎると副腎が疲弊して、適量のコルチゾールを分泌できなくなります
副腎への負担が大きいため、なんとか体の炎症を取り除こうと、アメリカでとりいれられた方法がグルテンフリーです。
小麦、グルテンをとると、それほど体内で炎症を引き起こすということなのでしょう。

グルテンと炎症の関係

小麦を食べないことで炎症が起きない、その理由はグルテンに含まれる「グリアジン」と、グリアジンが分泌を促す「ゾヌリン」に関係しています。私たちの体は、入り口は口から出口は肛門まで、まるで竹輪のように一つの管で繋がっています。食べものは、口で噛み砕かれ、胃や小腸で消化され、吸収されやすいサイズまで分解されると、小腸の細胞の間を通り、血液中に運ばれ、必要な細胞に届きます。

本来、人の体には、脳や小腸など様々な器官の表面を覆っているバリア機能をもつ細胞の層によって、最適な内部環境が維持されています。細胞層のバリアは、タイトジャンクションと呼ばれる細胞の周りをベルト状に取り囲む接着装置を介して細胞同士が結合して作られています。タイトジャンクションは、隣り合う細胞同士をしっかりと結合することで、すき間を埋め、物質の透過を制限します。

グルテンの一番の問題点は、このタイトジャンクションを開くように働くシグナルを出してしまうことです。シグナルはゾヌリンです。グルテンに含まれる「グリアジン」が「ゾヌリン」の分泌を促します。おなかの中に不要なものが入ったとしても、タイトジャンクションがきちんとしていれば何も問題はありません。

ところが、小麦製品を食べ続けてゾヌリンが分泌され、ゾヌリンによってタイトジャンクションが緩み細胞の間が開きっぱなしの状態になると、未消化の物や細菌が血中に入り「腸もれ」(リーキーガット)になります。体に対して異物と判断され免疫が働くと、炎症が起きるため、コルチゾールが分泌されます。コルチゾールも枯渇すると、慢性炎症、副腎疲労tなってしまうのです。また、脳には解毒機能のための臓器がないため、血液から脳組織への物質の移行を制限する血液脳関門という仕組みがあります。
毒素などが脳細胞に行かないようになっています。

しかし、ゾヌリンが作用すると脳のタイトジャンクションも開き、血液脳関門から毒素が入ってしまうと考えられています。最近はアルツハイマー型認知症のなかでも、マイコトキシンというカビ毒の問題があり、アルツハイマー病のリスクを増加させます。朝にパン、昼にパスタ、おやつにクッキー、おやつは鯛焼き、夜にラーメンなど小麦を使った食品ばかり食べていると、常にゾヌリンが分泌されることになります。タイトジャンクションが開いたままでは、体は機器的状態になるので、グルテンフリーが支持されているのです。

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